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第72回 フィンランドのIT
 

 

●技能五輪フィンランド大会

  仕事でフィンランドに行くことになり、この1月末からの1週間、東京を離れました。場所はフィンランドの首都、ヘルシンキではなく、ヘルシンキから飛行機で1時間ほど北東に進み、ロシアとの国境に近い「ヨエンス(Joensuu)」という街です。

  この街では、現在「技能五輪」という、職人のオリンピックのフィンランド大会が開かれていて、そこで使っているシステムを、今度、日本の静岡で開かれる「技能五輪・世界大会」で使用するので、そのシステムを調べに行ってほしい、というのが、お仕事でした。

●フィンランド産業・社会基盤

  ところで、フィンランドという国は、人口が520万人と、東京都の半分の人口しかありません。もちろん、北欧の国なので、非常に寒いところで有名です。国土は本州くらいの大きさがありますが、その北側の1/3くらいのところは北極圏に入ります。オーロラが見える場所もこの北極圏に入ったところになります。

  また、欧州ではITの盛んな国として有名です。たとえば、無料のOSとしてMicrosoft社のOSをしのぐ、という勢いのLinuxの元を作ったLinus Torvalds氏はフィンランドの出身です。また、現在世界の携帯電話でトップシェアを誇るノキア社はフィンランドの企業として有名です。

  フィンランドはまた社会保障が非常に発達した国として有名です。消費税は30%ほどにもなりますが、その代わり「大きな政府」のため、人々は死ぬまで、国家からなんらかの保障を得られる仕組みになっています。かといって、国民に労働意欲がない、ということもないのは、ノキア社など世界に冠たる企業が存在することでも、証明できることでしょう。

  歴史的には、常に隣国であるロシアと欧州列強のあいだにはさまれ、戦争ともなると、必ずその大きな被害を受けたばかりではなく、常に周辺のどこかの国に領土を脅かされることになり、大変に困難な外交を切り抜けてきています。特に、私が今回訪れたヨエンスという街はロシアとの国境に近い大きな街のひとつであるため、常にロシアとの対峙の最前線に立たされ、戦争になるたびに、大きな犠牲を強いられてきた街でした。

●フィンランドの国民性

  フィンランドはその国土のほとんどが低湿地であり、Google Earthから見ても、多くの湖がまだらのように存在し、湖ではないところは森ばかりです。暖かいところではないので、食べ物も豊富でもありません。周りの国といかに協調して生きていくか、ということが大変に重要な意味を持つ国です。

  そのため、国内にあっては国の中をまとめ、国外にあっては、頭を使って交渉をし、価値のあるものを創造していかなければならない、ということが、大変に重要な意味を持つ国です。そのための強力な「道具」がITです。また、IT以前から、音楽や芸術などにも国は力を入れていて、これがフィンランド国民をひとつにまとめる、非常に重要な役割をも担っている、と言ってよいでしょう。

●ITの普及率

  そんな国のITは、人口の少なさとも相まって、国のどこでもネット接続が使え、国民が携帯電話を持つことが当たり前、という国になっています。世界トップシェアのノキア社はGSM携帯電話で知られていますが、このGSM携帯電話はICチップの挿入口があり、日本で買った携帯電話に入っているICチップ(SIMチップ)を、欧州で買った携帯電話に挿入したら、その場で携帯電話が使えるようになります。

  また、現在のノキアをはじめとした米国や欧州の携帯電話でも、E-Mailが使えることが当たり前になっていますが、E-Mailを快適に使うためには日本の多くの携帯電話についているような簡単なキーボードではなく、フルキーボードがついているものが欲しい、という場面が多々あります。そのため、現在米国や欧州でビジネスマンに使われている携帯電話の多くが、フルキーボードを備え、大きなカラー液晶画面を備えた少々大きなタイプのものになっています。フィンランド滞在中にも、この種類の携帯電話を多く見ました。

●IT発達の背景

  ムーミンの国、フィンランドの冬はとても長く、私が行ったヨエンスは、年中マイナス20度以下、という大変に寒いところです。その代わり、短い夏は「風光明媚」ということばがぴったりくる、まさに森と湖の国です。その国の長い戦争の歴史は、この国に「欧州一」と言われる携帯電話の会社を出現させ、この国のITを発達させた、と言っても良いでしょう。

  いざというときの備えで、いちばん大切なのは、きっと食料でしょう。そして、その次に大切なのが、情報を得ることです。この国はそういうことをいちばんわかっている国だからこそ、ITや携帯電話などを重要なものと考える国になったのではないか−。私は、今回フィンランドに行って、そういう思いを深くしました。

 

 

 
     
   
  ※ここでは、このコラムの著者三田典玄氏が撮影された写真の中から、著者選りすぐりの作品を毎回数点ずつ掲載しています。  
 

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