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第62回 ライブドア事件
 

 

●強制捜査

 1月16日、六本木ヒルズにあるライブドアに、東京地検特捜部の抜き打ち査察が入りました。そして23日には、社長の堀江貴文が逮捕。容疑者となり、「ライブドア」は、飛ぶ鳥を落とす勢いだった会社の名前ではなく、事件の名前になりました。

●技術は高かった

 実は、ライブドアという会社のサーバ管理者やプログラム開発者は、かなり技術レベルが高かったと私は思っています。だから容疑者となった役員はいいのだ、ということではないけれども、ITの技術という面から見たら、最高の技術とは言わないまでも、それなりの技術者をそろえていた「IT企業」になりつつあったことは間違いありません。
  企業のM&Aや証券取引などの関係で大きなお金が動き、そこに不正があったことは事実のようですが、その会社にいる技術者の力は、とりあえず会社の規模に見合ったものではなかったか、と思います。

  それにしても、ネット上での「言いたい放題」のblog関連をいろいろ見て歩いていると、「ホリエモン、がんばってくれ」という意見が、「あいつはもうだめだ」という意見や「法律を犯してはいけない」という意見と同じほどあります。私などは彼に期待することはなにもないのですが、彼に期待した人は、なにを期待していたのでしょうか?

●ITバブル

  ライブドアの前身であるオン・ザ・エッジという会社は、米国でインターネットバブルがはじけようか、というまさにそのころ、日本ではまだ「大丈夫」だったバブルの波に乗って、証券会社等からの投資などで大きくなって行った会社です。

  私はそのころ、米国の事情をよく見ていた時期でもあって「ITバブル・ネットバブルはもうだめだな」という感触を持った頃でした。もう懐かしい響きになってしまった「渋谷ビットバレー」というところに集う人たちもいましたし、ソフトバンクの孫氏は、まさにその頃のヒーローでした。

●見せ方のうまさ

  あの頃から、いろいろな人たちが「IT」の名、「ネット」の名のもと、浮かんでは消え、浮かんでは消えていきました。ちゃんとした技術を持った会社や人もいましたが、そうではなくて「見せる」ことだけがうまい、というところもありました。あの頃「IT・ネット」と言えば「ブラウザで見える画面」のことでしたから、驚くようなきれいな画面を見せると、技術を知らない投資家は驚いてお金を出したのです。

  日本の投資家は、IT関連のコンサルタントの言うことも聞かず、自分の目と耳、そしてつたないIT関連の知識などだけで、世の中を見ていましたし、今もそうでしょう。つまり、本当に世の中に必要とされている技術や本当に世の中を変える技術というものが、日本の投資家にはまだ見えていない。だから、ライブドアのような「見せることだけがうまい」企業に、だまされてしまうわけです。

  対して、米国などの「投資の本場」では、ベンチャーキャピタル自身が、技術の判断ができるくらいの人を雇っていることが多く、その技術の社会的意義や、技術そのものの特異性などを勘案したうえ、20年とか30年というタームで投資を考えるのです。

●投資の底が甘い

  今回の事件は、確かにライブドアという会社やそこに集まる役員たちが犯罪を行った、ということでもあるのですが、それ以上に、日本のITはじめ、技術関連の投資の底の浅さをも、示したものなのではないでしょうか?

  勉強し、技術を知る経験豊かな人たちとともに、まともな投資が行われていないからこそ、今回のような事件の主人公を作ってしまったのではないでしょうか?誰かを悪者にして、それで事件が解決、ということではないように、私は思うのですが。

 

 
     
   
  ※ここでは、このコラムの著者三田典玄氏が撮影された写真の中から、著者選りすぐりの作品を毎回数点ずつ掲載しています。  
 

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