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第45回 研究とお金のあいだ
 

 

●世界の投資家たち

  前にも書いたことですが、最近、私はバイオとのかかわりの仕事をすることが多くなりました。世界の投資家たちの目の向いている新規の事業も、ITの案件は少なくなり、その代わりにバイオが注目されるようになってきました。投資はバイオに集まり、ITにはそんなに集まらなくなりました。

  意地の悪い見方をすれば、ITなどのように「すぐ答えが出るもの」ではない「新しいがゆえになんだかわからないもの」というところに投資家を誘導すれば、投資に対する「答え」を早く出さなくていいし、ITのようにかなりのシロウトでもなんとなくわかるものでは、中身のよしあしがバレやすいから、証券会社がバイオを推奨する、ということもあるのではないか、と勘ぐってしまいそうです。

●自然科学

  まぁ、そういうことはないだろうと信じますが、バイオの世界全体は、実はどんなに偉い先生でも、どんなにアタマのいい官僚でも、その全部を把握している人は、ほとんどいません
  なぜかというと、ITの世界は「ほとんどすべて人間が作ったもの」ですから、「発展」することが約束されている世界です。対して、バイオというのは、「自然科学」ですから、自然という膨大で複雑なものを、人間の知性というまことにちっぽけなものでなんとかしようとしているものだからです。

  簡単に言えば、いくら科学が進んでも、人間そのものを一から作ることは、今のところ、大変に遠い道のりである、ということなんですね。

●わからないことがわからない

  そうなると、「ゴールが見えない」どころか、研究している人自身が「なにを研究しているのだかわからない」というものにこそ、研究の価値が生まれるような分野だったりします。つまり、わからないことがわからない、わかっていることもわからない、でも、その中で少々はわかってきたものも、ないわけではない。そういう分野がバイオなのです。

●バイオは儲かるか

  研究というのは、なにも経済的利益のためにだけするものではありません。しかし、人間の一生には限りがあるし、使えるお金にも限りがあるので、どうしてもその制約を拡大したり、その制約の中でなにかをしなければならない、という「人間社会の制約」があります。当然ですが、生物すべてが人間の理解の及ぶものであるかどうかの保証もありません。

  新聞などを読むと、ついつい「バイオ」の世界はかなり人間にわかってきているように言われています。また、それがすぐに利益につながるような記事も見受けられます。しかし、実際人間社会の経済活動に直結するような研究成果は非常に少ないのです。そしてそのどれもが、必要で重要な研究なのです。

  人間の経済からのみモノを見れば「経済的効率が悪い」ということになります。研究にはお金がかかります。でも成果はすぐには期待できないもののほうがむしろ多い。ほとんどがそういう研究であるといっていいでしょう。

  また、研究されていることすべてが重要な研究とも限らない。それが重要な研究であるかどうかは、今わからなくても、後でわかることだってあります。簡単に言えばバイオなどの自然科学の研究などは、人間社会の経済活動の範疇ではいかんともしがたいものなのかも知れません。

●人間社会への応用

  それでも、人間社会への「応用」を考えている「応用のための研究」をしている人もたくさんいます。しかし、応用はあくまで応用であり、その下に膨大な基礎があって、はじめてできることです。人間の経済などは、自然から見ればじつにちっぽけなものでしかありません。バイオの研究をしている研究者は、そのことをよく知っているはずです。でも、この人間社会で生きていくための処世術として、彼らは本当のことは言いません。

  バイオ、ITに限らず、必要なことは大変に多く、使えるお金は少ない。これはバイオに限らない人間社会の永遠のジレンマでしょう。

 

 
     
   
  ※ここでは、このコラムの著者三田典玄氏が撮影された写真の中から、著者選りすぐりの作品を毎回数点ずつ掲載しています。  
 


さくら